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そば打ち技術(SOBA-making technique)講座・②そば粉とつなぎ

2018-06-17
玄そば(黒い殻が付いています)
 ①玄そば(黒い殻が付いている)
  ②丸抜き(「抜き」とも呼ぶ)
  ③殻ごと玄そばを粉砕した状態
 ④さらしな粉(実の中心部分のみ)
⑤普通のそば粉(殻が混じっている)
    ⑥玄そばの1粒
  前回の講座1回目は今年の3月18日の記事に「①そば道具」として載せていますが、今回の講座2回目は「②そば粉とつなぎ」について書きます。
 
  最初に写真の説明をしておきます。左から、①は玄そばと呼び、収穫した時の状態と同じです。四面を持っています。⑥に1粒だけの写真を示しました。拡大してご覧ください。②は殻を取った丸抜きで、最近はこれだけを挽いてそばにすることも多いです。殻が入ると風味が増す気がしますが、必ず大きな殻を40目の篩を通して除かなければなりません。また殻が入ると多少ザラっぽさが出ます。殻は蕎麦にしたときに「ホシ(星)」と呼ばれる黒い点となって見ることができます。ホシが入った蕎麦を好む人も多く、好みによります。
  ③は玄そばをミルで粉砕したもので、昔の「田舎そば」はこれを篩った粉を使い、かなり黒い蕎麦でした。それは田舎の家々には脱皮機が無かったため、玄そばを石臼で挽いたためでした。そば粒も粗く、繋がらないため太く短いものでした(親戚のおばあちゃんが存命の頃ご馳走になったことがありますが、お世辞にも美味しいとは言えません)。筆者はこれを40目で篩って丸抜きを挽いたものに加えることがあります。
  ④はさらしな粉と呼ばれている実の中心部だけの粉です。これは元々粉状なので、潰すと最初に出てくる粉がさらしな粉です。これだけで打つ「さらしなそば」や「変わりそば」もあり、そば好きの好むおしゃれで上品な蕎麦となります。また外国産のさらしな粉を打粉としても使いますが、そば粉として使うものより白度は落ちます。
  ⑤は普通のそば粉で、多少殻もブレンドされています。一般に40目で篩った粉で、挽き立ては湿っぽいので手の平で握ると固まって転がしても壊れません。日が経つうちに乾燥して最後はサラサラの状態になりますが、こうなると手の平で固めることはできません。挽き立てかどうかを見分ける方法となります。写真は挽き立てなので自然に団粒ができていますね。
  ⑥は玄そばですが、四面の殻は比較的たいらで、割ると面ごとの殻に分かれます。これは結構固く丈夫なので、石臼で挽くと詰まりの原因となります。それは石臼の上下の石がこの殻によって滑ってしまい、押し出すことができなくなるからです。そこで筆者は粉原料の2割までは玄そばを加えて石臼で挽きますが、玄そばを単独でミルに掛け、そのあと丸抜きと混ぜて挽くという方法も採っています。
 
  ソバは一般には寒暖差の大きい山間の傾斜地に美味しいものが取れると言われ、寒冷地が主産地となっています。ロシア・中国が最も生産量が大きく、日本はかなり少ない方で、しかも北海道を筆頭に東北地方に偏っており、関東以北のそば文化を形成しています。それに対して小麦粉の生産が盛んな関西ではうどん文化が主流となっています。ですが流通の便が良くなったお陰で現在ではネットでどこの産地のものも手に入るようになっています。
 
  ですが近年の人手不足から輸送費が高騰し、送料は馬鹿にならないほど高くなっているため、近在で手に入るそば粉を求めることは理に適っています。筆者も車で30分ほどで行ける益子で生産している「常陸秋そば」という改良種の丸抜きそばを購入して自分で挽いて使っています。おおよそ玄そばだとキロ当たり550円、丸抜きで800円、そば粉で1000円ほどの値段です。これに送料が加わると重い粉のことですから、倍近くの値段になることもあります。
 
  自家製粉の設備を持っていない人が圧倒的に多いでしょうから、どこかでそば粉とつなぎ粉、そして打粉を購入することになります。食品スーパーなどではそば粉とつなぎ粉は購入できますが、美味しくないものが多いのと、打粉が手に入らないことが多いので、ネットで探して製粉所に買いに行くのがベストです。そばの会に入っていれば、会で用意した粉を使うことができます。
 
  そば粉は多くの場合、ブレンドされているか、玄そばを1~2割ほど加えた丸抜きを製粉して作ることが多いようです。製粉所により割合が異なりますが、そば屋では割合や粒度などを指定して特注することもあるようです。最近は石臼製粉する製粉所も多くなっていますが、大量生産品はロール製粉機で製造しています。石臼の方が粒度分布が広いと言われ、好みの問題ですが食感が良いと言われます。ロール製粉は少し前までは熱を持つことで良くないと言われましたが、最近はロールを水冷することでこの問題は解消されています。素人はその製粉所でお勧めのそば粉を購入するのが最善でしょう。
  
  つなぎの小麦粉は輸入物が多いのですが、中力粉であれば問題なく使えます。製粉所でもほとんどが他から仕入れたものを販売しており、これを買えば間違いありません。そば屋ではつなぎを良くするために強力粉を使うところもあると言われますが、実態は分かりません。つなぎを入れる理由は、そばだけでは繋がりにくいからです。そばのタンパク質や繊維質が多少はつなぎとなりますが、それだけでは良く繋がらず、短い蕎麦になります。10割(生粉:きこ)を売りにしているそば屋も多くありますが、決して食感的においしいとは言えません。江戸時代に小麦粉をつなぎとして使う手法が編み出され、2割をつなぎとして入れる「二八そば」が流行りました。以来これが標準となっています。それは小麦粉にはグルテンと呼ばれるつなぎ成分があるからです(正確にはグルテンは水と反応してできる成分です)。グルテンが多いものが強力粉(きょうりきこ)・中くらいが中力粉・少ないものが薄力粉(はくりきこ)と呼ばれます。料理によって使い分けますが、そばと混ぜるのは一般に中力粉とされています。
  さらしなそばを打つ場合、さらしな粉に小麦粉を加えて打つ方が無難で、しかも熱湯を使います。それはさらしな粉はほとんどがデンプンなので、熱湯で糊化(こか:糊にすること)させてつなぎとする方法が使えるからです。さらしな生粉打ちはデンプン糊だけで繋ぎとするため、高度な技術が必要となります。
  
  そもそも町のそば屋では「手打ち」を謳っていなければ間違いなく中国産の安い仕入そば粉を使っており、我々素人には逆にそのような海外産の粉を入手することは難しいのですが、大手製粉会社では海外産の安い粉も販売しています。海外産(中国・アメリカ等が多い)が不味いということはないようで、ただ品質(農薬の有無等)に懸念があるため、素人はほとんど国内産のそば粉を地元の製粉所から購入して使います。特にそば打ちの会では大量に消費するため、中袋(30kg位)でまとめ買いすることが多いようです。その際、送料の有無が大きな価格差になります。
 
  そば粉が美味しいかどうかは店頭では分かりません。一度試して美味しければ続けて買うでしょう。筆者は袋の外側からそば粉を摘まんでみて、その崩れ具合で水分量を推定し、また擦り合わせてみて粒度を判断します。その程度しか分からないのが素人買いの残念なところですが、製粉所ならば触らせてもらえると思います。よくソバの名産地で粉を購入しますが、期待通りに美味しかったのは半分くらいでした。販売者が意外に無造作に粉を扱っているのは困ったものです。透明な袋に入れて太陽光線を直に当てていたり、袋の中に空気がパンパンに入っていることも多いようです。これらはそば粉の劣化を早め、乾燥させるのでとても良くないことです。筆者はこのような展示品を買う気になれません。
 
  そば粉の粒度が粗い場合は打つのが難しく、細かければ初心者でも簡単に打てます。それは水の吸い方が粒度によって大きく異なるからです。細かければ早く水が浸透するので水加減がやり易く、粗いと浸透時間が掛かるので打っている途中から固く締まってくるので、割れやヒビが入り、いわゆる「サメ肌」状態になって失敗したり、水を入れ過ぎて超軟玉になって失敗したりします。つまり粗い粉は水加減の範囲が極めて狭く、上手な人でも加水に失敗したりします。また加水の仕方(分割加水・一気加水)によっても加水量は大きく変わります。通常の粉ならば、季節によって数%の差(夏:42~45%・冬:43~47%)はありますが、加水で失敗することは少ないでしょう。
 
  つなぎ小麦粉(中力粉)の割合は繋がりに大きく影響するだけでなく、食感を大きく変えます。10割(生粉打ち)はつなぎが無いためそばの風味は強く出ますが、食感が悪くなることが多く、一般にぼそぼそしたものになってコシも出ません。やはり1割以上のつなぎはあった方が美味しく感じられます。人によっては7割そば(七三そば)が一番美味しいという人もいます。二八そば(8割そば)が一般的なので、この割合にしておいた方が無難でしょう。人に訊かれたときに、「七三です」と答えると日本人は「ケチった」と思うのが普通なようですから、二八ならばそのような問題はありません。ちなみに筆者は七三が一番好みですが、普段は滅多に打つ機会がありません。
 
  ちなみにそば屋では二八と断っていなければ七三くらいが多いようで、乾麺になると2割以下でも「そば」と呼んでいます。筆者も人気のそば屋に行ったときに割合を聞いたところ七三だと正直に答えてくれました。「生そば(きそば)」と看板に書いてある店が多いですが、本来は10割でなければならないはずなのに、そういう店ほどかなりそばの割合を減らしています。
 
  今回はここら辺で切り上げますが、参考になりましたでしょうか?