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ビジター用:近況・ニュース

日本の「寝かし文化」を考える

2018-03-17
  日本の食品には多くの発酵を利用したものがあります。酒・味噌・麹・くさや・納豆・醤油・鰹節などです。世界的にもパン・ワイン・ヨーグルト・チーズなど菌を利用した食品が多くありますが、日本の多様さには及ばないでしょう。そばにおいても鰹節は魚肉を熟成させて旨味を作り出しており、醤油もみりんもそうです。これらを用いて作った汁でさえ、加熱して殺菌されているにも拘わらず熟成させます。
 
  確かにそば汁は作ってから少なくとも1日置けと言いますし、返しは1週間と言われます。庵主の実感ではおよそ1ヵ月くらい経った汁はまろやかさが増して、美味しさも向上しているのを感じます。これらは菌の働きとは思われません。十分殺菌されているはずだからです(今回はボトル詰めする際の温度は70℃でした)。ではなぜ熟成が起こるのか、ということについては余り詳しく研究されていないのか、あるいは単に知らないだけなのか、庵主には分かりません。生肉の場合には肉が持っている酵素によってタンパク質が分解されるということのようですが、加熱された汁の場合の熟成はどうやっておこるのでしょうか?
 
  生肉を熟成させることを「エイジング」と言うそうです。乾燥肉ではよく知られたことで、肉のタンパク質や繊維が分解して旨味成分が増すことで柔らかくなり、さらに香りを増して美味しくなるのですが、これを熟成と呼んでいます。生肉でも同様のことが起こるようで、エイジング・ビーフを提供している銀座の店では腐る寸前まで肉を寝かせるそうです。高級な店では一皿数万円すると言いますから、とても庶民の食べるものではありません。考えてみれば寿司ネタのマグロ肉も熟成させています。新鮮なものより熟成させた方が美味しいからです。このような食文化が全国で見られるというのは日本の食文化の特徴だと思われます。
  世界のどこでも、食材・食品では新鮮さが最大のウリとなっています。ところが日本では熟成がウリになっているのです。庵主は鮭とばが大好きで、歯の強化のために毎日咬んでいますが、これも熟成によって旨味が非常に強くなっています。椎茸も同様で、太陽光線によってビタミンや旨味が増加します。そしてそば汁も寝かせることでまろやかさが増します。
  そば自体では三立てと言われるように新鮮さを求め、一方、汁では寝かせることで熟成を求めるという2つの異なった考え方が共存しているところに面白さがあると思いました。
 
 
 
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