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B-F:栽培と製粉

B-F:「栽培と製粉」のサブテーマ

 「栽培と製粉」では、そばの栽培や製粉についてまとめてみます。以下にサブテーマを記しますが、順次内容をアップしていきます。
 
 B-F-1:ソバの栽培
 B-F-2:製粉について
 B-F-3:脱皮 (工事中)
 B-F-4:石抜きと磨き (工事中)
 B-F-5:玄そばの製粉 (工事中)
 B-F-6:丸抜きの製粉 (工事中)
 B-F-7:石臼製粉 (工事中)
 B-F-8:ロール製粉 (工事中)
 B-F-9:ミル製粉 (工事中)
 B-F-10:石臼の目立て (工事中)
 B-F-11:粉のブレンド (工事中)
 B-F-12: ???
 

B-F-1: ≪ソバの栽培≫

 ソバには普通ソバ・ダッタンソバ・観賞用赤花ソバがあります。他にも宿根ソバがありますが、食用として使われていないのでここでは省きます。通常は日本国内では普通ソバが栽培されていますので、ここではこれについて解説します。
 
 まずソバは、タデ科・ソバ属に分類される一年生草本作物であることを知っておく必要があります。タデ科の植物が穀物として利用されていることは珍しいことです。そのためソバの成分も他の穀物と異なり、しかも全粒製粉(実の部分である丸抜きを全部使う)されることで、栄養価が高いことが特徴です。「タデ食う虫も好きずき」と言われるように、タデ科には苦味の強いものが多いそうで、これはダッタンソバ(苦蕎麦と呼ばれる)に表れていますが、普通ソバは甘味さえあり、とても美味なものなのです。実は3稜形で種子を1個含み、上方に向いて稔ります。タデ科の中で最も経済的に重要なものが穀物としてのソバです。ちなみにタデ科の中では野菜・香辛料とされるルバーブやヤナギタデ(普通タデと呼ばれる)、また漢方薬などの薬用にされるダイオウ(大黄)やツルドクダミ(何首烏)が利用されています。イネが栽培できないアジアの中山間地では、ソバは主食用に栽培されています。

 地方には在来種と呼ばれるその土地に適応した品種が多いのですが、混雑により純粋種は少なくなっているのが現状です。在来の固定品種としては津軽の「キタユキ」・信州の「信州大そば」・「島田スカーレット」・ネパール由来の「高嶺ルビー」等があります。ソバの改良品種として、日本では約30品種が登録されています。北海道には「牡丹」・「キタワセ」・「キタユキ」・「キタノマシュウ」・「レラノカオリ」があり、ダッタンソバとしては「北海T8号」・「満天きらり」があります。青森県には「階上(はしかみ)早生(わせ)」、岩手県には「岩手早生」、山形県には「最上早生」、茨城県には「常陸(ひたち)秋そば」、長野県には「信濃一号」・「信州大そば」・「しなの夏そば」・「グレートルビー」、宮崎県には「宮崎大粒」などがあります。

 ソバは他花受粉(異なる花のおしべとめしべが受粉する)をするため、自然交雑が起き易く、土地の栽培種と異なる種類をむやみに個人で栽培することには注意が必要です。赤花の鑑賞用のソバをおもしろいからと言って趣味で栽培することすら危険です。栽培家(生産者)に迷惑を掛けないようにしてください。また、ソバには夏ソバと秋ソバがあり、それぞれ、夏(6月初旬)と秋(8月初旬)に播かなければなりません。秋栽培型品種を夏栽培することはできません。北海道では霜が早く来るため、夏栽培型の品種しか作れません。そのため新そばは北海道産が9月頃から出始めます。内地では一般的に11月頃から新そばのシーズンになります。
 
 準備:種子は製粉所から玄ソバを購入するか、生産者から分けてもらうのが良いでしょう。栽培前の準備として畑を耕す必要がありますが、ソバは極めて成長が早いので、雑草防除のために深く耕す必要はありません。水はけの良い畑を選ぶことが大切で、水田を畑に転換して栽培する場合には、圃場に溝を切る必要があります。
 播種(はしゅ):コンバイン収穫では散播でかまいません。手収穫の場合の播種量は10a(アール)あたり4~6kgが標準で、畦(うね)幅30~50cmで条播(じょうまき)し、それぞれの畦の中の播き幅は10cm前後にします。播種量の目安は、10aあたり5kgの場合、畦幅30cmならば100mで150g程度とします。足の長さごとに3粒ほどを置き、その上に1cmほど覆土し、長靴で鎮圧します。その際、泥が靴底にくっついてくるようですと種が正確に点播きできませんので、少し土が乾いてから行うと良いでしょう。
 手入れ:ソバは手間が掛からない、栽培期間が短いため除草がいらない作物と言われます。ですが、暖かい地域での夏ソバでは雑草が発生しやすいので、必要と思われたら畦間の除草をした方がいいでしょう。土寄せ(培土)をすることで、明らかに収穫量が多くなるので、畦間の除草を兼ねた土寄せをすることをお勧めします。病害虫による被害も少なく、たまにヨトウムシ(夜盗虫)による葉の食害がある程度です。指定農薬はありませんし、使わなくてもいいでしょう。ちなみにイネの害虫であるイチモンジセセリは、ソバにとっては大切な益虫だそうです。肥料は通常は必要ないと言われます。しかし茎を丈夫にするためや実を大きくするためには、リン・カリを施肥することは助けになるでしょう。
台風対策:栽培期間中に台風が来たら打つ手はありません。諦めて運を天に任せましょう。ソバは倒伏(とうふく・とうぶく)し易い作物なので、できるだけこれを防ぎたいのですが、効果的な方法はありません。
 収穫:種子の色が60%以上褐色になったら、収穫します。コンバインの場合は、80%以上まで褐変するまで待ちます。ということは40%はまだ未熟なのですが、この未熟なソバは早刈りソバということで、青み(緑色)が濃く、これを好む人が多いので問題はありません。手刈りの場合には写真のように結束し、圃場に実を上にして1~2週間程度天日干しします。手刈りの後に島だて乾燥すると、機械収穫した場合よりも品質が良好と言われます。この際に完熟種子が落ちてしまうことがありますが、これを防ぐことはできないと諦めてください。天日干しが作物をおいしくするというのは米と同じです。
 脱穀・石抜き・磨き:脱穀には、イネ用の脱穀機を代用できますが、それが無い場合は大きなビニールシートを広げて、その上でソバ束を固い物にぶつけて取る方法がいいでしょう。ソバの実には土やゴミが付いていることが多いので、これを取り除くためにはトウミを使って風選するか、または篩(ふるい)にかけます。庵主は古い無処理玄ソバを貰った時に、これを大きなバケツに入れて洗うとゴミや未熟種子が浮くのでこれを取り除き、土や石は下に沈むのでバケツの水を掻き混ぜながら金網でソバの実だけ掬うという方法を採りました。大量処理には不向きですが、自家用程度ならこれでも処理は可能です。しかも水で洗っているので石抜き・磨きも兼ねています。しかも5年前・10年前の玄ソバがこれで生き返り、とてもおいしい蕎麦が出来ました。その理由は科学的には不明ですが、古いソバの実に生気を与えたからだと思っています。というのは、ソバは過乾燥すると食味が損なわれるため、水分を15%程度に保持することが大切だそうだからです。
 保存:玄ソバで保存するのを基本とします。これによって水分の蒸発を防ぐことができますし、光による劣化を防ぐこともできます。庵主はさらにこれを冷凍保存することで氷温冷蔵効果により、甘味を増すことをしています。氷温冷蔵とは穀物などの種子が凍らない程度に低温にすることで、種子が凍らないように糖分や油分を自ら作り出して守ろうとする作用を利用した保存方法で、単に保存期間を延ばすだけでなく、よりおいしくすることができます。玄米では-3℃程度で10日ほど保存すれば古米が新米になります。甘味だけでなく、粘りも増します。ソバの場合は丸抜きを冷凍庫で-15℃で1ヶ月以上冷凍保存していますが、最適な温度と期間は実験していませんのでわかりません。それでも保存は確実で、何ヶ月経っても青みが残っている。甘味の増加は確認できませんが、その維持は確実に為されていると感じます。丸抜きを-15℃で冷凍すれば凍ってしまっていると考えるのが普通ですが、常温に戻して水に浸けると発芽しますので、ソバは生きているのです。結論としては玄ソバでも丸抜きでも冷凍するのが最高の保存方法だと言えます。ですが、専用の冷凍庫を持っていないとこれはできません。庵主はネットで中国製の縦型冷凍庫を8万円ほどの価格で手に入れました。かなりな量が保存できることで、1度に20~60キロの保存が可能です。(終)

 

製粉について

製粉は古代から人類が穀物を食べるために編み出した技術です。米・麦・ソバなどの多くは製粉という過程を経て粉にされ、そのまま粥にしたり、練って玉や麺にして食されました。その製粉は最初は擂鉢のようなもので砕くという破砕という方法で行われたことが想像されますが、およそ紀元前3千年前(約5000年前)のサドルカーンと呼ばれる粉砕器が歴史上の最初の製粉器といわれています。これは凸凹のある洗濯板のような石板の上に小麦を置き、上石を前後に動かして擦るようにして挽く道具です。この原理は石臼と同じです。次に誕生したのは石臼製粉器で、およそ2800年前に発明されたのではないかと考えられています。前後運動を回転運動に変えたところが進歩となっています。こうして次第に石臼を使った摺り砕に移っていったと思われます。さらにこの手挽きは水力を使った水車挽きや牛などを使った動物力挽きに進化していきました。現代ではモーターを使ったロール製粉や電動石臼製粉、そして高速回転刃で切削する粉砕ミル製粉(切砕)という方法もあります。家庭用の電動製粉機には、錐形をした螺旋刻みの入った軸とその外側の凸凹壁との間で剪断するラメッリ製粉機(1588年発明)や、これが棒状の螺旋刻みの入った軸になっているベックラー製粉機(よく見るコーヒーミルと同じ:1662年発明)などがあります。コーヒーミルにも切削を利用した粉砕ミル製粉機があります。

それぞれの製粉方法によって一長一短がありますが、石臼は片方が固定された面であり、面挽きになるため処理量が少ないという制限が出てきます。一方ロール製粉はロールとの接触面は線状なので、粉砕は一瞬で行われ、しかも両軸とも動いているので瞬時に排出され、処理量ははるかに大きくなっています。これがロール製粉が現代に広く普及した理由です。製粉の際の発熱の問題では、一見では石臼の方が石材が熱を吸収してくれるので良いように思えますが、長い時間の製粉では結局石材が熱を持ってしまうので反って不利となります。その点ロール製粉では最近はロール自体を冷却水で冷却するようになっており、この点での不利を克服しています。まだ石臼を冷却する仕組みを持つ機械が出てきていませんので、熱の問題ではロール製粉に軍配が上がるでしょう。

つぎに製粉時間を考えてみると、庵主が使っている31cm径の電動石臼では、1kgを挽くのに1時間半ほど掛かっています。実際に粒子が石臼を通過する時間ははっきりとはわかりませんが、少なくとも数分は掛かっていると思われます。それに比べてロール製粉は一瞬ですから、これも圧倒的にロール製粉に分があります。製粉時間が長いとそれだけ熱や酸素に晒される時間が長いということになりますので、決して良いことはありません。

そばの乾燥という点から見てみると、自家石臼製粉の方がはるかに有利であると庵主は考えています。なぜかというと、ロール製粉では大量に処理が可能であることから、工程が全てフロープロセスになっており、製粉された粉はニューマチックという空気搬送によって多段篩に送られ、それが混合されて袋詰めされるというのが一般的なため、工程でかなり水分が蒸発してしまうのです。また酸素とも触れあって酸化も進んでいると思われます。この点については詳しいデータがないのでなんとも言えませんが、実際に製粉所で買ったそば粉も店頭で買ったそば粉も乾燥気味なので、この推測は正しいと思っています。それに比べて自家石臼製粉した粉はしっとりしていて、握ると全く崩れません。皆さんが店頭で買ったそばを同様に握ってみてください。ひどい場合はさらさらと崩れてしまうでしょう。こうしたことから、問題はロール製粉か石臼製粉かではなく、ニューマチックを使っているかどうかだと思われます。

 

以上製粉に関する一般論を述べてきましたが、ソバの場合は、製粉をする前に下ごしらえをしておく必要があります。その工程は、①磨き・②石抜き・③選別に分けられます。庵主はバケツに水を8分目ほど入れて、これに収穫した乾燥玄ソバを入れ、上に浮いた葉っぱなどを水ごと流して取り除く方法をとりました。これを洗浄選別法と自分では呼んでいます。不良なソバ粒も浮きますので、これも一緒に除けるので選別を兼ねています。下に沈んだ優良粒を今度は園芸用の篩(4mm目程度が良い)に入れて泥や小石などを除きます。これを乾燥させた後、再度篩上で石が入っていないかを目視で選別します。これはとても良い方法だと思われます。古い玄ソバはこれで生気を取り戻すようで、5年前、10年前の農家の納屋にあった玄ソバもとてもおいしく食べることができました。

製粉所では専門の機械を使ってこれらの処理をしますが、4番目の工程として④脱皮(抜き殻とも言う)があります。これは鬼皮と呼ばれる外側の黒くて硬い殻を取ることにより、丸抜きを得るためです。機械的に脱皮するには、ゴム状の板に玄ソバを空気流とともに勢いよくぶつけて殻を取るという方法が主流になっています。この際に実までが割れてしまうことがあり、一部は殻とともに排出されますので、これを篩って殻を除いたものも使います。

 

製粉は玄ソバから始める場合丸抜きから始める場合があります。素人の製粉では丸抜きを買ってきてこれを製粉した方が良いでしょう。製粉所では両方の方法を使い分けていると思われます。庵主の経験では丸抜きに2割以上の玄ソバを混ぜるとそば殻によって滑り現象が起こって焼き付けを起こす可能性があります。そこでホシ星)入り(殻が黒い点として混じっている蕎麦の状態)の蕎麦を打ちたい場合には、1割程度の玄ソバを丸抜きに混ぜて挽くこともあります。

製粉所が行う製粉には①ロール製粉と②石臼製粉があります。ロール製粉というのは19世紀にヨーロッパで生れた技術です。2つの螺旋刻みの入ったローラーを逆方向に回転させながら、その間にソバを入れて製粉する方法です。このときローラーの回転数を違えることで、単なる挟み粉砕効果だけでなく、擂り潰す効果が主体になっています。つまり破砕と摺り砕の2つの原理を使っていることになります。

こうしてみると、ほとんどの製粉の原理は擂り潰しの効果を使っていることがわかります。唯一違う原理に基づくのが粉砕ミル製粉で、これは高速回転刃による破砕・切削効果だけを使っています。

ロール製粉に戻りますが、この方法だと従来は連続運転によりロールが熱を持ち、これがに弱いソバに悪影響を与えるとされてきました。そのため長い事ロール製粉の粉はおいしくないという噂が流れていました。しかし上述したように、現在はこの欠点が水冷却装置の登場で克服されており、この噂は過去のものになりつつあります。大量販売されている外国産の粉や国産粉でも大手が扱っているものは、石臼挽きと銘打っていないかぎりロール製粉されていると考えて間違いはないでしょう。

製粉における粒度の問題について考えてみます。一般的にロール製粉では均一に細かく挽くことができるとされており、ある意味では打ちやすい粉とも言えます。それに対して、石臼挽きの場合は石臼の目立てや上臼と下臼の間隔によって粒度はまちまちになります。これは利点ともなり得ることで、一般には粒度の粗い粉の方がおいしいとも言われますので、わざと石臼で粗い粉と細かい粉を作り、これを40目の篩で篩って分け、粗い粉を一部混ぜて打つということができます。一般的に素人そば打ちではそば粉を40目で篩って、粗い粉は捨てることが多いのですが、その粗粉(篩上)を30目か20目で篩って大きいものを除いて再度加えることによっておいしい蕎麦ができると、多くの人が言います。

 

「蕎麦屋八兵衛」の町塚延夫氏が足利そばフォーラムで語ったところによれば、そばは粒を壊さない方がおいしいとのことで破砕が最良だそうです。次に切砕、摺り砕の順。石臼は摺り砕ですから意外なことでした。八兵衛では玄ソバを独自の目立てをした石臼で挽いているそうです(押し挽き)。これを玄ソバ挽きと呼ぶことにします。これで得た一番粉と二番粉でそばを打つそうです。この歩留まりは約65%。そばのタンパク質が少ないためつながりは悪いので、割粉(中力小麦粉)を28%まで増やすこともあるそうです。一番粉は実の芯の部分がそのまま出てきたもので、押し挽きや破砕をしたときに最初に細かい粉として得られます。これを一番粉と言いますが、およそ玄ソバから50%が得られます。押し挽きにしても破砕にしても鬼皮と呼ばれる殻が出ます。鬼皮だけを除いて実の部分だけにしたものを「抜き」とか、「丸抜き」と呼びます。最初から丸抜きから挽くという場合も多いので、この鬼皮を取り除くにはソバを押しつぶすことで簡単に取れます。ソバの実は4つの面を持つ三角菱型をしており、それぞれの面が簡単に割れて剥がれるのです。鬼皮は固くて丈夫ですが、切砕では細かい粉になってしまい、これがそばに混じってきます。そうでなくても玄ソバ挽きでは必ず少量が混じります。ですが丸抜きから製粉した場合(これを「挽きぐるみ」・「全粒粉挽き」と呼びます)には鬼皮は混じりません。よく蕎麦に黒いものが混じっている場合がありますが、これを「ホシ(星)」と称しており、星が多い黒っぽい蕎麦の場合は田舎蕎麦と呼ばれます。これは昔は粗い石臼で玄ソバを挽いたため、12目の篩で鬼皮を除いても二番臼で細かく挽いたものに細かく砕かれた鬼皮が混じってくるためです。そのため田舎蕎麦は黒くて繋がりも悪いため太い麺とするのが普通です。

一番粉は手に握った感触としては「キュ、キュ」と鳴き、でんぷん質が多く、さらさらとして握っても形にならないほどです。これを通常は更科粉と呼びます。ですが現代ではさらにこれを篩分・精製して白度を高めるようにして更科粉としています。二番粉は篩った際に篩に残った粗い部分をさらに細かく挽いて、細かい篩で篩って得られるもので、多少しっとり感を持っています。三番粉はこの篩分けで得られる粗い粉のことで、現代の“田舎蕎麦”では丸抜き製粉をしたものに三番粉を1割程度入れ、多少太めに切ります。

 

2012.2.1初稿・2015.2.12追記)

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